アウトバウンドコールの規制について

[ 第2回 イギリス UK ]

 

 

電話会社としてBritish Telecomが幅を利かせている同国ですが、アウトバウンドの規制についての代表的組織としてOfcomがあります。

Ofcomもまた、消費者保護という観点からルールを作成しています。日本と違う所はその後のフィードバックを取り込み、アウトバウンドコール業界と消費者両方がハッピーとなる「落とし所」を模索してその結果、より具体的かつ実行可能なルールへと改良されている所でしょうか。
なお規制は定期的に更新されますので、正式な規制が状況を把握したい場合は、各規制にかかわる組織/団体の発表を確認してください。

規制に関する主な組織:

Ofcom
http://www.ofcom.org.uk/

 

関連法規:

Trackling abandoned and silent calls(Oct 2010)

内容はもちろん、英語です。日本のガイドラインのように「あいまいな内容が数ページ書かれている」というわけではありません。そこには「目的」、「注力している規制箇所」、「具体的な数字」、「ルールを運用してみての反響」や「これまでに至った経緯」なども盛り込まれています。

 

 

Ofcomが注力している規制:

放棄率 (Abandoned call rate) 3%以下

「放棄呼率」とも呼ばれます。ここではアウトバウンドコールの中でも特にプレディクティブダイヤリングを行う業者をターゲットにしたルールと考えていいでしょう。
このルールの内容を知るためには、まず、放棄呼とは何かを理解しなければいけません。日本のコールセンターではそのまま「アバンダンコール」ともよく呼ばれますがその業務においてこの言葉が指している意味合いが異なります。アウトバウンドコールでは、お客様(一般消費者)へ電話した際、何かの理由でエージェントに接続できずに放棄されたコールの事を指します。このような電話を受けた消費者は無言電話がかかってきたと認識し、非常に不快な思いをしてしまいます。また、プレディクティブダイヤリングはシステムで行っていますので、場合によっては同じ消費者の方に一日の内に複数回同様の事象に会うことがあり得ます。
そのため、こういったあたかも無言電話のような振る舞いをなくすため、Ofcomは各業者に対し、放棄呼率 (Abandoned call rate)を全体の3%以下にするよう定めています。

ここまで読むと「案外、普通」と思われるかもしれませんが、ここからが日本と大きく異なる所です。それは...

 

ペナルティが設置されている
なんと最大2Millionユーロ。相場にもよりますが、日本円で3-4億円程度でしょうか。アウトバウンドコール業者のうち、何割の会社がこの巨額のペナルティを受けて経営が耐えられるでしょうか。このペナルティは確実に業者に遵守させる強制力となっています。

 

アウトバウンドコール業者も真剣になる
そのため、アウトバウンドコール業者もルールを守ることが当たり前になります。しかし、自分の会社の利益を守るためにもルールで定められた上限ギリギリまでコールしたいとも思うはずです。当然の動きとして、実運用に際してルールが不明瞭な点や現実的に無理なことは規制団体や消費者を交えて明確にされていきます。

ルール明確化の例を挙げると、上で「放棄呼率(Abandoned call rate)を全体の3%以下にする」と書きましたが、この放棄呼率には相手(消費者)につながらなかったコールや留守電だったものは「なかったもの」として「全体のコール」には含みません。逆に生身の人間が電話に出たが、アウトバウンド業者側のAMD(Automatic Machine Detector)が誤って留守電宅と判断して切断してしまったコールは放棄呼としてカウントしなければなりません。

 

 

その他の規制事項:

また、規制において以下のような値についても定められています。

  • 放棄呼率の測定間隔
  • 放棄呼率の測定範囲
  • キャンペーン単位、データセンター単位など。
  • 各コールの最低呼び出し時間
  • 消費者が応答後、エージェントに繋ぐまでの最大間隔
  • 営業時間
  • コール履歴データ保持期限

これらの規制値や「守るべき行動」は今後、当局による制度の見直しと伴に変更される可能性があります。そのため各業者はコールセンターシステムやIP-PBXのダイヤリングシステムにルールを設定することで確実に順守し、また変更があった際もすぐに対応できるようにしています。


 

次回はその他の国の規制について紹介します。

>>アウトバウンドコールの規制について [第3回 北米(アメリカ/カナダ)]