2025年までにNTT固定電話網(PSTN)はIP網へ移行予定。2. IP電話サービス導入方法
今回は前回の続き。前回の投稿では2024年1月から2025年1月にかけてNTT東西は固定電話網(PSTN)をIP網へ移行することについて、その概要を説明しました。また、その際、IP電話サービスの利用について触れましたが今回はさらに掘り下げて、実際に企業が採用したIP電話サービスの具体的な導入方法についてシステム目線で紹介します。
目次
キャリアのIP電話サービスとは?
従来のPSTN回線とは別にIP網による電話サービスです。2019年現在、日本では主に以下のようなものがあります。
NTT東西 : 「ひかり電話」
使用回線数別にプランがあり、「ひかり電話」、「ひかり電話オフィスタイプ」、「ひかり電話オフィスAエース」となります。名前にもある通り、回線には光ファイバーが使用されています。
NTT東日本(https://business.ntt-east.co.jp/service/info-distribution.html#anc-01)
NTT西日本(https://flets-w.com/solution/hikari_service/)
KDDI: 「光ダイレクト」
こちらも光ファイバーをアクセス回線とした、KDDIの高品質IP電話サービスです。J.D. パワー「2018年法人向けIP電話・直収電話サービス顧客満足度調査」において6年連続第1位を受賞しています。
(https://www.kddi.com/business/voice-phone/ip-phone/hikari-direct/)
楽天コミュニケーションズ: 「IP-phone」
旧フュージョンのIP電話サービスです。
(https://comm.rakuten.co.jp/houjin/ip/)
IP電話サービス導入方法
パターン1.キャリアのIP網に直収
前回も軽く触れましたが、このケースでは企業側の主装置(主にPBXまたはIP-PBX)がキャリア側のIP直収に対応している必要があります。 もし現在、自社の主装置がキャリアのIP直収に対応していない場合、この方法を選択するチャンスは次回の主装置更改タイミングといえます。基本的にはキャリアがIP直収を認定しているIP-PBXへと更改し、IP電話化します。
大まかに言うと、国産大手メーカーのレガシーPBX/IP-PBXの多くでは専用ボードが搭載可能となっており、IP直収に対応することが可能です。しかしながら、コールセンターシステムなどで利用される海外メーカーの電話システムでは国内キャリアのIP直収の認可を取れていないものが多いため、機器を選定する際には注意が必要です。
その他、IP-PBX等の選定時、注意するべき点として複数のキャリアのIP電話サービスの収容に対応しているかチェックしてください。そうすることにより将来、企業はシステムの機器変更を伴わずにキャリア回線を変更することができます。
※対応機種を調べるには各キャリアのWebサイトが参考になります。例として、こちらKDDIの「光ダイレクト」対応機種一覧のページです。この一覧では、国内大手ではNEC、富士通、沖電気など。海外製品では日本アバイア、日本ブレケケなどのIP-PBXがIP直収に対応していることがわかりますね。
パターン2. ITSPゲートウェイを介してのキャリアIP網への接続
自社内の主装置(IP-PBX)がキャリアのIP直収に対応していない場合のソリューションです。既に社内はIP-PBXによりIP電話化されていますが、直収が認可されていない機種のため、キャリアのIP網へはそのままでは接続できない、実にもったいないケースです。しかしながら、このケースは非常に多く見られます。
この理由として、一般に企業が主装置(IP-PBX)を選定するにあたり、自社特有の色々な条件をクリアする必要があります。以下、いくつかその例を挙げてみました。
- 自社で使用しているIP電話端末をサポートしているか?
- 同時通話数などパフォーマンスは大丈夫か?
- 自社で使用している他システム(他の電話システム、コールセンターシステム、CRMシステムなど)と連携できるか?
- 価格は適正か?
よって、これらの条件を満たし、さらに「キャリア直収に対応」となると、選定候補となる主装置(IP-PBX)が見つからない事態となってしまうのです。
そこで登場する装置がキャリアIP直収対応のゲートウェイとなります。こういった機器はInternet Telephony Service Providerとの接続を可能にするためITSPゲートウェイとも呼ばれています。
ITSPゲートウェイ内部ではSIPやRTPといったIPパケットのルーティングを高速で行っているため、基本的に遅延や音質の劣化はありません。
それでは、ITSPゲートウェイを利用した例をご紹介します。
A社事例: クラウドIP-PBXとITSPゲートウェイを使用してマルチキャリアIP網へ接続
こちらは複数拠点を持つ企業の導入事例です。クラウドにあるIP-PBXと拠点の端末をVPNで接続して、内線網を構築しています。一方、外線は各拠点からITSPゲートウェイ経由でキャリアのIP電話サービスへとルーティングされます。
※1.簡略化のため冗長構成は記載していません。実際はPrimary-Secondaryの冗長構成が取られています。
※2.本事例ではゲートウェイとして日本ブレケケ社の「ITSP Gateway」, 端末はYealinkT series, Panasonic KX seriesを使用。
ITSPゲートウェイの最大の利点は、自社の主装置を変更せず、接続するキャリアを選べることです。マルチキャリア対応のITSPゲートウェイが各キャリアとの接続仕様の違いを吸収します。
現在ISDNやPSTNを使用している企業の方は、IP電話サービスへの移行を検討してみてはいかがでしょうか。