コールセンターシステム技術者が知っておくべきAI技術の勘所。[その1. AI(人工知能)技術とは?]
コールセンターシステム技術者が知っておくべきAI技術の勘所。初回は「AI技術とは?」という問いについてイメージを持ってもらうことが目的です。ご存知のようにAIという言葉はバズワードとして巷で溢れています。その言葉と技術の扱う範囲はとても広く、何処から手を付けて良いかわからないほどです。
コールセンターシステムにもAIの波は押し寄せてきました。至る所で利用されています。しかしながら、ある機能では試作段階、またある機能では実用段階とその技術の成熟度は異なります。また、悪質な「AI」と謳っているもののAIではない製品も氾濫しています。
ここで一度、コールセンター関係者がおさえておくべきAIの知識を整理して、悪質な業者に騙されないようにしてみませんか?AI技術を正しく有効に使用すればあなたのコールセンターにきっとプラスに働くはずです。
目次
対象はコールセンター関係者
ここではコールセンターシステム技術者が自身のシステムにAI技術を採用するにあたり、正しい選別が出来るようになることを目的としています。
またIT技術者でないコールセンター関係者も理解できるよう、AIについての予備知識がなくてよいように説明します。
前述した通り、AIという言葉は非常に多くの分野をカバーしているため全てを説明することはできません。今回はコールセンター関係者が知るべき内容に焦点を当てます。
AIとは何を指すか?
いきなり核心ですが、AI(人工知能)とは何のことかについて考えていきます。この言葉は色々なものをイメージさせます。SFの世界で人間に向かって襲ってくるロボットや、将棋やチェスで人間に勝つコンピューターなどなど。AIとはバズワードになっているため定義すること難しいのです。しかし、AIがここまで広く利用されるようになった理由はやはり「機械学習(マシンラーニング)」技術とそれをより深いレイヤーまで行う「ディープラーニング(深層学習)」技術の発展があるからです。
少々、乱暴ですが「AI技術=ディープラーニング技術を応用したもの」と思って構いません。逆にこれら技術を使っていないのにAIを騙るものは少し疑ってみる必要があります。
- ポイント: まずはAIを謳ったソフトウェアやサービスについてディープラーニングを応用したものかチェック!
ディープラーニングとは何か?
ディープラーニング技術はヒトの脳神経系を模した数理モデル「ニューラルネットワーク」をその基礎としています。ディープラーニングについての学習本はいくつも書店に並んでいますので、詳細を勉強したい方は是非チャレンジしてください。ここでは初心者が学ぶ際の流れをまず紹介します。
1.パーセプトロン(ニューラルネットワークの最小単位のようなもの)を理解する。
2.ニューラルネットワークを理解する。
3.ニューラルネットワークが学習するとはどういうことかを理解する。
4.ニューラルネットワークが万能ではないことを理解する。
5.結局、前処理、畳み込み方法、後処理が重要であることを理解する。
今回、ここで紹介したい点は「ディープラーニングのコアな部分(ニューラルネットワーク)が万能ではない」ということです。
ディープラーニングが万能ではない例
ニューラルネットワークは学習します。ここでいう「学習」とはニューラルネットワークに流れたデータを利用して最適な解を導き出すよう、ニューラルネットワークが自身のパラメータの値を自動で更新することです。
乱暴に言うと、多くのデータをニューラルネットワーク内に流すことによりパラメーターも少しづつ更新され、最終的にニューラルネットワークが出す答えが最適解に近づくという理屈です。この学習方法の代表的なものに「勾配法」と呼ばれるものがあります。
しかしながら、この方法では局地的な最適解には向かっても、本当の最適解にはたどり着かない場合があります。
こちらのイメージ図を見て下さい。縦方向は解の最適度合い、横方法は解の分布だと思ってください。青丸のような解を出したニューラルネットワークは次回はさらに良い解を出そうと自身のパラメーターを更新します。次回は矢印の方向に解が出やすくなります。最終的には赤丸の値までは近づきますが、実は最適解は緑の丸の所だったりします。
そのため実際のシステムでディープラーニングを使用する場合、その用途や目的に合わせてその弱点を補う施策がされています。
前処理と後処理が大事
ディープラーニングは音声解析や画像解析など至る所で使われています。各ベンダーが多くの製品を出しておりその性能もバラバラです。ではどうしてこんなに性能の差が出るのでしょうか?勿論、原因は一つではありません。あえて乱暴に言うと、このニューラルネットワークに学習させる前処理段階の技術で差が出ます。
ニューラルネットワークは単純に学習する部分です。その目的や用途によって価値のある良質な解が出るよう整理したデータを流す必要があります。この部分をConvolution(畳み込み)と呼びます。この部分を組み込んだニューラルネットワークはCNN(Convolutional neural network)と呼ばれます。
実際にニューラルネットワークに計算をさせている時は解が発散しないよう(常識ではありえないような値をとらないよう)、初期条件、境界条件のチューニングが必要です。そしてこの作業には高度な技術が必要です。
また、データのインプット時だけではなく、ディープラーニングが出力した解をどう処理してシステムやサービスのアウトプットとするかということ(後処理)も重要です。
- ポイント:前処理としてどういうことを行っているのか、またディープラーニングで得た解をどのように利用しているのか、そのベンダーに訊いてみよう。
100%ピュアAI技術利用が正しいとは限らない。
ディープラーニングの現実社会での応用は難しい技術です。間違った学習をする時もありますし、ビジネスでは許されない解を出す場合もあります。そのため多くのAI製品では従来のアルゴリズムとディープラーニングの両方を利用したハイブリッド型が採用されています。つまり、これまでの製品の足りない機能をディープラーニングが補うといった形ですね。
これは正しい形です。極論すると利用者からしてみればAIかどうかは重要ではありません。その製品の性能が要件を満たしているかが重要です。
- ポイント:AIというバズワードに振り回されず、その製品本来の性能を見極めましょう。
コールセンターシステムでのAI利用
コールセンターシステムでのAIの利用は以下の2パターンに分けられます。
- オペレーションに利用 :
オペレーター業務の一部をBotと呼ばれるAIが担当するケース、AIが最適な回答候補を検索してオペレーターの画面に表示するケースなどが該当します。
- データのマイニングに利用:
収集した顧客データの分析や評価に利用するケースなどが該当します。
やっとコールセンターに特化したAIの話になってきた所ですが、、、長くなりましたので具体的な製品や事例の紹介は次回行います。