今日から使える実践技術 [3. IP電話機(Yealink T4X)で実際にプロビジョニングを行ってみる]



今日から使える実践技術 [3. IP電話機(Yealink T4X)で実際にプロビジョニングを行ってみる]

 

 

 

前回「今日から使える実践技術 [2. IP電話機メーカーによって違うプロビジョニング仕様]」では、IP電話機のプロビジョニングについて、各メーカーによって仕様が異なることについて説明しました。今回はさらに一歩踏み込んで実際のIP電話機を使用してプロビジョニングの設定手順を紹介しようと思います。

今回のプロビジョニングの例として、Yealink社のSIP-T48Gという機種を使用します。Yealink社のT4Xシリーズの他機種でもほぼ同じプロビジョニングの仕様です。

こちらがYealink社公式サイトです。(https://www.yealink.com)

プロビジョニング概要

まずはYealink機器に限らず、プロビジョニングについて簡単に説明します。基本的にプロビジョニングは次の2つのステップで行われます。

1. プレプロビジョニング

2.プロビジョニング

 

「1. プレプロビジョニング」とは機器を開梱してネットワークにつなぎ、初めて電源を投入した際、実行される手順です。Yealink機器は工場出荷時に設定されたプレプロビジョニングサーバーのアドレス宛てにプロビジョニングサーバーのアドレスを問い合わせに行きます。このことをプレプロビジョニングと呼んでいます。各ユーザー企業はこのプレプロビジョニングサーバーに自社のプロビジョニングサーバーアドレスを事前に登録しておけばOKです。

 

一般的に2回目以降のプロビジョニングではプレプロビジョニングサーバーへの問い合わせは行いません。これは初回のプロビジョニングでプロビジョニングサーバーのアドレスを既に取得しているためです。

今回はプレプロビジョニングのフェーズは割愛します。実際のプロビジョニングについて説明します。

 

 

 

Yealink T48Gでプロビジョニングをやってみる

Yealinkのプロビジョニングでは主に2種類の設定ファイルを使用します。一つは端末共通の設定ファイル(common.cfg)、もう一つは端末固有の設定ファイルMAC.cfgです。ファイル名の”MAC”の部分には各端末のMACアドレスが入ります。このためファイル名からどの端末用の設定ファイルであるかがわかります。

そして、プロビジョニングを行う前の作業としてこれら2種類のファイルを準備する必要があります。

 

1.共通設定ファイルcommon.cfgの準備

まずは共通設定ファイルcommon.cfgから。ファイルの中身はこんな感じです。雰囲気だけ感じ取ってもらえれば。

コメントアウト行も含むとデフォルトで1500行ほどあるファイルです。しかし、通常の設定では使用しなくてよい項目も多くあります。

Yealinkの設定ファイルの特徴としては”設定項目(パラメータ)=値”というフォーマットで記述されています。xmlファイル形式に比べて通常エディタでの可読性に優れています。

プロビジョニングではこのcommon.cfgファイルが先立ってサーバよりダウンロードされ、端末設定に利用されます。端末間で共通なネットワークセグメント、使用するring toneコーデックタイムゾーン言語初期ディスプレイ表示内容などの設定に使用されます。

 

 

2.MAC.cfgファイルの準備

次にMAC.cfgファイルを見ていきます。前述した通り、ファイル名の”MAC”部分には実際の端末のMACアドレスが入ります。(例:001651234525C.cfg)

設定ファイルを開くと以下のような感じです。

こちらもボリュームのあるファイルで、コメントアウト行も含むとデフォルトで2,500行ほどあります。こちらのファイルにも通常の設定では使用しない項目も多くあります。

プロビジョニングではこのMAC.cfgファイルの準備が大きなヤマ場です。端末数が1000台の場合、1000ファイル作成する必要があります。しかも端末毎にIDやパスワードが違うため、設定ファイルの該当行を編集していく必要があります。

 

 

3.プロビジョニングサーバーの準備

これらファイルを作成すると、プロビジョニングサーバーに配置します。Yealinkではプロビジョニングサーバーとしてftpサーバやhttp(s)サーバなどが推奨されています。(自前で構築する必要があります。)

 

 

4.プロビジョニング開始

実際に端末に電源を入れてプロビジョニングを行います。

 

 

5. 設定が反映されたか確認

例として、今回、以下のような内容をMAC.cfgに記載していたとします。(一部抜粋。実際はもっと長いです)

#######################################################################################
## Account1 Basic Settings ## 
#######################################################################################
account.1.enable = 1
account.1.label = 101
account.1.display_name = 101
account.1.auth_name = demotenant1_101
account.1.user_name = demotenant1_101
account.1.password = demotenant1_101
account.1.outbound_proxy_enable = 0
account.1.outbound_host = 
account.1.outbound_port = 
account.1.sip_server.1.transport_type = 0
account.1.sip_server.2.transport_type = 0
account.1.sip_server.1.address =192.168.1.36
account.1.sip_server.1.port = 5060
account.1.sip_server.2.address =
account.1.sip_server.2.port = 5060

 

実際に端末の設定を見てみましょう。以下のように設定が反映されていればプロビジョニング成功です。

 

 

6. プロビジョニング完了後について

プロビジョニングが完了したら、プロビジョニングサーバーへの接続を遮断するか、プロビジョニング用設定ファイル群をサーバー上から退避することをオススメします。これは設定ファイルの盗難や予期せぬ再プロビジョニングを防止するためです。

 

如何でしたでしょうか。具体的な作業について、イメージできたのではないでしょうか。プロビジョニングは便利な機能ですが、その設定ファイルの編集作業、およびファイル自体の管理はマニュアル(手作業)で行うと非常に大変です。

 

次回はサードパーティが提供する便利なプロビジョニングソリューションを紹介します。>>