コンタクトセンターシステムを考える [第2回クラウドコールセンターサービスの長所と短所]
(2019.1.2 更新)
クラウドサービスは増えているが
現在、日本でもクラウドコールセンター(コンタクトセンター)サービスが各社より提供されています。検索ワードで「コールセンター クラウド」などと検索すると多くの日本のサイトがヒットします。
これらのWebサイトでは「最短~日間で開始」、「最適」、「拡張性が高い」、「~月無料」、「初期費用0円」などクラウドの強みであるキーワードが並びます。
クラウドサービスは利用すべき?
それではコールセンターを運営する側としては今後、クラウドコールセンターサービスを積極的に利用していくべきでしょうか?オンプレミスはもう時代遅れなのでしょうか?
どちらが良いとは一概には言えません。なぜならばどちらも長所、短所があるからです。
各コールセンター運営業者はその長所、短所を把握して自社の業務にどちらの形態が適しているか正しく判断する必要があります。
本記事では初めにコールセンターシステムの代表的な機能を紹介して、その後クラウド型とオンプレミス型の違いを説明していきます。
コールセンターシステムの機能
一般的にコールセンターシステムとはコールセンター業務に必要なITシステム全体を指します。企業において一般的な電話の発信、着信であれば交換機「PBX」システムだけで十分なのですが、効率的にコールセンター業務を運用管理するためには追加で多くの機能が必要となります。以下は代表的なコールセンターシステムの機能です。
CTI関連機能
- ワンクリックコール
- 自動顧客情報表示機能
- トークスクリプト表示機能
- その他CRM連携機能
高度なコール ハンドリング機能
- IVR(Interactive Voice Response) 自動音声応答
- ACD (Automatic Call Distributor)自動着信呼分配機能
- Dialer ダイヤラー機能
管理/分析関連機能
- 全通話録音
- コールモニタリング
- 三者間通話機能
- 各種レポーティング
- オペレーター稼働状況モニタリング
その他機能
- メール、Web、ソーシャルメディアとの連携
- 要員管理(WFM)
クラウドでもこれらの機能は提供可能
コールセンターの機能について、基本的に「オンプレミス型と比べてクラウド型だからXXXができない。」といった制限はありません。前述したようなコールセンター機能は技術的には提供可能です。しかし、クラウドサービス業者によってその提供するサービス内容に差があります。自社のコールセンター業務で使用する機能がそのクラウドサービスに含まれているか事前にチェックが必要です。
使用できるコールセンター機能について、クラウド型とオンプレミス型で大差がないことはわかりました。ではどういった点が異なるのでしょうか?
次の章ではクラウド型についての長所と短所についてまとめました。
クラウドの長所、短所
クラウドの長所
クラウドコールセンターならではの強みとして以下のようなものが挙げられます。
1.どのようなコールセンター(コンタクトセンター)の規模にも対応可能。
2.月額/年額制のレンタル料。ユーザ数の増減に対応可能
3.設備(サーバー)の投資不要。電話回線も不要の場合があり。(サービス込み)
4.短納期導入、スタートが可能(最短数日~数週間)
5.ロケーションフリー
6.システムバージョンアップやメンテナンスの管理者が不要です。
クラウドの短所
それではクラウドの弱みとはどのようなものがあるのでしょうか。一般的には以下のようなことが言われています。
1.自社にデータが保存されていないためセキュリティ面が気になる。
2.品質。サーバが外部にあるため、通信遅延やネットワーク障害に弱い。
3.画面や機能のカスタマイズが十分にできない
4.自社内の他システムの連携ができるか不安
5.長期的に使用した場合、金額が割高になる。
しかし、これらの意見は正しいとは言えません。これら1-5の短所と言われる点について、以下に現状(本サイト調べ)を記載しました。
1.セキュリティ面について
もちろん、いい加減な業者はどの業界にもいますので十分に気を付ける必要があります。しかしながら、大抵のクラウド業者はセキュリティ面は非常に厳しく管理されています。この点については「業者を選ぶ際に現地の立ち入り検査を実施する」、「文章による質問を送付し回答を求める」といった方法でリスクを軽減できます。
皆さんも大金は家に置かず、信頼のおける銀行に預けますよね。データも同じく、自社に置くことが最善とは限りません。
2.通信遅延やネットワーク障害について
ラッキーなことに日本は通信インフラが整っており、海外に比べ全くと言っていいほど通信のダウンはありません。クラウド業者のデータセンターが国内にある場合、通信遅延もネットワーク障害も気にしなくて良いレベルです。
また、海外にデータセンターのあるクラウド業者を選択する場合は、事前に通信の遅延やネットワーク断が自社のビジネスに与えるインパクトを検証しましょう。海外のサービスはコストが安い場合がありますので、ビジネスの内容によっては十分検討する価値はあります。
3.カスタマイズについて
残念ながらクラウドを選択した際の最も大きな問題の一つだと思います。この問題のため、クラウド選択について二の足を踏んでいる企業も多いと思います。近年、クラウドサービスの進化は日進月歩です。提供される機能は日々増加していますし、カスタマイズできる機能も多くなっています。
またぴったりと業務に合う機能がなくとも代替できる機能が見つかるかもしれません。場合によっては現在使用している機能よりも優れた機能が提供されている場合もあります。
この問題に対して一番有効な解決方法はとりあえず、使ってみるということです。本格的なクラウドへの切り替えの前に、小さな案件ベースでクラウドサービスを使ってみることもおススメです。合わなければすぐ止めてしまえばいいのです。
クラウド業者は「1か月無料」など、お試し用のプランを用意している場合が多いので問い合わせてみるのもよいでしょう。
4.システム連携について
クラウドのコールセンターシステムとCRMなど他のシステムを連携する場合、2パターンが考えられます。
- クラウドコールセンター <-> クラウドの他システム
- クラウドコールセンター <-> 自社内の他システム
特に前者の場合は自由度が下がりますので、自社の要件を満たすことが可能か事前の調査が必要です。
5.長期的に使用した場合の金額の妥当性について
現在、グラウドコールセンター(コンタクトセンター)の使用料相場はユーザ一人当たり1万円から2万円程度です。汎用的な業務のコールセンターサービスの場合安く、業種別に特化したより専門的なコールセンターは高くなる傾向があります。またオプション機能を付けていくと当然高くなります。企業により使用したい機能は様々のため、オンプレミス型のシステムを使用した場合とのコスト比較は一概には言えません。が、100名程度までの小中規模コールセンターを考えた場合、クラウドのコストは「若干割高」になるケースが多いようです。
しかしながら、以下のようなビジネスの条件の場合、クラウド利用がお得になります。
1.年間を通してコールセンターの要員数が大きく増減する
2.一時的にキャンペーンなどでコールセンターが必要
いかがでしたでしょうか。コールセンター(コンタクトセンター)のクラウドサービスは次々と新しいサービスが提供されていますので、定期的に関連サイトをウォッチすることをお勧めします。